代表挨拶

分光学は,光と物質の相互作用を通して物質に関する知識を得る基礎科学の一分野であり,人類の文化と文明の発展にとても役に立ってきました.例えば,MRI診断を受けると体内の様々な癌や脳腫瘍,脳梗塞などが分かり,医療に役立っています.MRI診断は核磁気共鳴分光にもとづく診断法で,体内の水素原子に磁場と電磁波(ラジオ波)をあててその応答から体内の構造や特性を画像として「見る」ことができます.その基礎には磁場中における水素原子の核スピンとラジオ波の相互作用があります.また,近年,温暖化が進み大きな災害が増加しています.地球温暖化の主な原因は,温室効果ガスである二酸化炭素CO2の大気中濃度の増加です.CO2センサーでは分光測定が利用されています.さらに,高分子や半導体など人間が利用しているほとんどの材料の製造や品質管理に分光学が利用されています.現代社会においては,医療,農業,工業,環境などの多分野で,分光学は影の力として必要不可欠なものとなっています.分光学を人類の文化・文明の発展に役立てるためには,分光学の基礎と社会のニーズを知り,分光学を基にして革新的なイノベーションを起こすことが重要で,若手研究者は未来の分光イノベーターです.

分光イノベーション研究会は,分光学の社会的意義をより明確に意識し,分光学者が本来担うべき社会的責任を確実に果たしてゆくことを目標に設立されました.具体的な目標は,大学院生や博士研究員のキャリヤパス支援,若手研究者の育成と国際デビュー支援,分光学の社会人教育を通して,学界と産業界で活躍する人材を育成することです.

分光学のさらなる発展に貢献できるように微力ながら尽力する所存ですので,よろしくお願い申し上げます.

分光イノベーション研究会代表 古川 行夫